大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)3855号 判決
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〔判決理由〕本件公正証書は、訴外南照夫が、訴外株式会社城栄社との間で金融取引をなすにあたり同社代表取締役でもあつた原告から交付を受けておいた白紙委任状によつて、訴外本阪武彦を原告の代理人に選任し、右阪本が原告の代理人として作成嘱託に関与し執行受諾の意思表示をしたものであることは、当事者間に争いがない。
そして、<証拠>を総合すれば、原告は、城栄社が昭和三五年春ごろ以来南から金融を受けるにあたり、同社代表者および個人として、「拙者らは、その振出・引受・裏書にかかる手形・小切手金債務、その他その責任に属するすべての債務につき連帯して支払の責に任じ、手形・小切手が一つにても不渡りになる等一定の事由により期限の利益を失い、または失うおそれありと認められるときは、公正証書を作成せられるも異議はなく、その際は貴殿において拙者らの代理人を任意選定し、適宜約款を定めて公証人に嘱託することを一任する。右公正証書作成に必要な委任状・印鑑証明書は要求の数だけ貴殿に託しておき、貴殿の指定する者において記入行使するも有効として異議を述べない」等の趣旨の条項が印刷されている承諾書(乙第六号証の一)ならびに「公正証書作成嘱託に関する一切の権限を委任する」旨の印刷文字があるほか、受任者・貸借金額・弁済期・利息損害金に関する定め等の各欄は白地のままの白紙委任状(甲第四号証)に署名押印して南に交付し、さらに同年一二月八日頃以降にも城栄社代表者および原告個人の印鑑証明書を南の要求に応じて交付したことが認められ、これによると、南との金融取引につき執行証言を作成すること自体は、原告も原則的にこれを了承していたものと認めることができる(原告本人尋問の結果中これに反する部分は信用できない)。
しかし、公正証書の作成について一方の当事者が他方に対し代理人の選任方を委任し、かつ任意に約款を決定し、しかもこれに執行認諾約款を附し得べき権限を与えたとしても、民法一〇八条の法意に照らし当然無効たるを免れないものと解すべきであり、本件の場合、証人阪本武彦の証言によれば、右白紙委任状の白地部分、すなわち受任者・貸借金額・弁済期・利息損害金の定め等の各事項欄は、いずれも右阪本が南の指示するまま記入したものであることが認められるところ、右各事項について南と原告との間であらかじめ合意があつたものと認めるに足りる証拠はなく、かえつて弁論の全趣旨によれば、貸借金額・弁済期等は南において一方的に決めたものであることが窺われるので、本件公正証書作成代理権の授与は無効といわざるを得ない。
(福永惇)